フリーランスを辞めたい人に最後に試してほしい起死回生の戦略

はじめの頃は希望に燃えているフリーランスも、2~3年続けるうちに「もう辞めたい……」となってしまう人がいます。
実際に辞めてしまう人もいて、その多くが仕事によって心身をすり減らしてしまったり、自分の能力に対する自信を失ってしまったりして会社員に戻っていきます。
そうなるとフリーランスとして頑張った経験が、人生の中の暗い記憶として残ってしまいます。
フリーランスをやめること自体は、決して悪いことではありません。
でもそれが自分の適正を判断した結果なのか、ただ訳も分からず振り回されて疲れ果ててしまったからなのかでは、その後の人生への影響がまったく違ってきます。
ということで今回は、フリーランスを辞めたい人に最後に試してほしい起死回生の戦略、というテーマでお伝えしていきます。
フリーランスを辞めたい原因のほとんどは人間関係に帰結する
はじめにお伝えしておきたいのは、フリーランスを辞めたくなる原因のほとんどは人間関係に帰結するということです。
アドラー心理学でも「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」みたいなことが言われていますが、それと通じるものがありますね。
原因1:仕事量と報酬が割に合わない
「アレもやってコレもやって」と作業量が膨大な割に、報酬はお小遣い程度…… みたいに、仕事量と報酬が割に合っていない依頼というのはフリーランスの心をボキボキに折ります。
こういう仕事量と報酬のバランスが取れていない案件というのは、受注前に交渉がちゃんとできていないことが原因です。
交渉ができていないというのは言うべきことが言えていないということで、突き詰めれば「相手との信頼関係ができていない」ということです。
もちろん依頼内容も確認せずお金ほしさに引き受けてしまい後で痛い目を見る…… というパターンもあるかもしれませんが、割に合わない仕事の多くは「自分の作業領域はここまで、もしそれ以外の作業が発生する場合は別途見積もり」など、事前に取り決めしておくことで回避できます。
原因2:仕事にやりがいを感じられない
仕事にやりがいを感じられないと、フリーランスとしてやっていく意味が分からなくなってしまいます。
実際のところ、フリーランスにくる依頼には社会的意義が大きいものばかりではなく、言い方は悪いですが内容的には誰がやっても同じとか、頭よりも手を動かすことが求められるようなものもあります。
でもそれが誰の役にも立っていないかと言えば、そんなことはありません。
当たり前ですが、仕事はその依頼主、つまりクライアントのためにするものですよね。
この人のために頑張ろう、この人を喜ばせようという気持ちが、仕事のやりがいにつながっていきます。
ところが、クライアントを好きになれなければ、このモチベーションさえなくなってしまいます。
そうなれば、やりがいの感じられない単純作業を延々とやらされるという地獄に突入するわけです。
原因3:すべて丸投げにされてしんどい
少し調べれば分かることでも、何でもこちらに相談してくる。
そういう相手への対応に時間を取られると、どんどん仕事の効率が落ちてしまいます。
これはクライアントというよりも、一緒に仕事をするパートナーにこういう人がいるとしんどいよという話です。
僕の経験したところだと、紙のデザイン経験がないデザイナーにイラストレーターの設定とかで分からないことをイチイチ聞かれたり、コーディングを依頼したWebデザイナーに「~の実装方法を教えてください」と聞かれたり、というのがありました。
依頼する側としては、そういう部分も含めてお願いしているわけなので、最低でも「まずは自分で調べる」くらいはしてほしいと思うところです。
しかし残念ながら、こういうフリーランスって結構多いです。
原因4:忙しくて休む暇も、何なら寝る暇もない
軌道に乗り出したフリーランスにありがちなのが、仕事を受けすぎて休む暇も寝る暇もないくらい忙しいというケースです。
こうなってしまう原因はスケジュール管理が不十分なこともありますが、クライアントとの信頼関係が築けていないことです。
「この依頼を断れば、次から声が掛からないかもしれない」という不安から、多少無理してでも引き受けてしまう。
最初のうちは気力や体力で乗り切れたとしても、いつか必ず精神的に限界が来ます。
僕もこういう経験があるのですが、いくら「やらなきゃ」と思っても、なぜか手が動かなくなります。
そしてどんどん時間が過ぎてますます焦る…… という負のループに入るわけです。
フリーランスを辞めたい人に最後に試してほしい起死回生の戦略
ここまでにお伝えしたフリーランスが辞めたくなる原因については、すべて人間関係、つまりクライアントや外注する・されるパートナー(Web制作会社やフリーランス仲間など)との関係にあります。
ということは、ここさえ改善できればフリーランスを辞めたい原因も解消される可能性が大きいわけですよね。
では、どうすればいいのか?
これからご紹介する方法は実際に僕がやってきた、そして今現在もやっている方法で、ハッキリ言って泥臭いですし、ある程度時間も掛かります。
しかし高いコミュニケーション能力や営業スキルが必要なわけではなく、それよりも行動量の方がずっと大事になってきます。
しかも続けていれば、他の誰にも再現できない「自分の好きな相手と、やりがいのある仕事ができる」という最強の人間関係も構築可能です。
戦略1:鬼のメール営業で人や会社とのつながりを作りまくる
ストレスまみれの人間関係にしがみつかざるを得ないのは、他に依頼してくれるクライアントがいないからです。
単純な話ですが、それなら新しいクライアントとのつながりができれば一気に問題を解消できます。
まずは鬼のメール営業で、関わりたいクライアント、一緒に仕事をしてみたいと感じる制作会社やフリーランサーにどんどんコンタクトを取ってみましょう。
実際やってみると分かると思いますが、返事が返ってこないことの方が多いです。
相手も忙しいわけなので、「必要ない」と判断されれば対応するためにわざわざ時間を割いてはくれません。
そこでイチイチ凹んでいても仕方ないので、どんどん次に行きましょう。
同業のフリーランスに話を聞いていると、「営業が苦手」という人ほど相手に過剰な期待をしていたり、自分のプライドが傷つくことに敏感なように思います。
特にクリエイティブ系の仕事の場合、どうしたって「好き・嫌い」が判断材料に入ってきます。
いくらセンスがよかったりスキルが高かったりしても、「テイストが好きじゃないから」みたいな理由でいい反応が得られない、なんてことは普通です。
自分がトレンドを取り入れてデザインするのが得意だとしても、昔ながらのデザインをヨシとする制作会社にとっては響くものがないと判断されるでしょう。
もちろんコンタクトを取る段階で「一緒に仕事をしたい」と思えるところに絞ることも大切ですが、それでもリアクションをもらえるのはよくて10~20%くらいだと思います。
あと、返信をもらいやすくなるポイントが2つほどありますので、一応お伝えしておきます。
自分と相手との間に共通点がある
地元が一緒、経歴が似ているなど相手と自分との間に共通点があると、相手に興味を持ってもらいやすくなります。
ちょっとイメージしてみてほしいのですが、
- 同じ学校を卒業したAさん
- まったく共通点のないBさん
一度も会ったことがない2人がいたら、あなたはどちらにより親近感を持つでしょうか?
間違いなくAさんですよね。
そうすると、何か依頼したいことができたときに声をかけるのは、高い確率でAさんになります。
しかも、スキルの面ではBさんよりAさんの方が多少劣るとしても、なぜかAさんの方が安心感があります。
この安心感の正体こそ、「共通点」なんですね。
共通点を強調することで、つながりを持つきっかけを作ることができますし、その後に仕事が発生したときに思い出してもらいやすくなります。
得意分野を提供することで喜ばれそう
自分の得意分野について、リソースが不足していそうな会社にコンタクトを取ってみましょう。
- デザインが得意なら、デザインのクオリティがあまり高くない制作会社にコンタクトしてみる
- コーディングが得意なら、デザインがいいけどコーディングはどうやら…という会社にコンタクトする
- SEOが得意なら、ブログで日記ばかり書いているお店などにコンタクトする
こんな感じで、自分の得意分野を提供することで喜んでもらえそうな相手に連絡してみるわけですね。
それが相手にとってメリットだと感じてもらえれば、反応してくれる確率は高まります。
なおこの場合、自分が本当に「得意である」ということを示す必要があるため、メールの中で実績を伝えたり、問題の解決策を提案してみると効果的です。
デザインやコーディングなら過去の制作実績を見てもらえばいいですし、SEOなら現状の問題点を指摘しつつ改善策を提案できるといいかもですね。
できるだけ具体的に見せることで、相手にもメリットをより鮮明にイメージしてもらうことができるでしょう。
戦略2:気持ちよく仕事ができる相手との関係に集中していく
鬼のメール営業を続けていると、結構忙しいくらい受注が増えてきます。
とはいえ、いくら気になった会社に絞ってコンタクトをしたとしても、すべての取引先といい関係を築けるわけではありません。
気持ちよくコミュニケーションができないクライアントや、一緒に仕事することで自分のイメージする品質が実現できないパートナーからは徐々に距離を置き、気持ちよく仕事ができる相手との関係に集中していきましょう。
「気持ちよく仕事ができる」といっても、自分だけに都合がいいというようなものではなく、お互いにいい影響を与え合えるような関係を大切にしていきましょう。
- 自分が仕事することでメリットを提供でき、クライアントはそれに対して正当な報酬を支払ってくれる
- 自分の得意分野を活かすことで、Web制作会社の納品物の品質が向上する
みたいな感じで、こうやって文字にすると当たり前のことなのですが、こういう関係を築けるクライアントやパートナーとの関係を大事にしていきます。
信頼関係は、「依頼されて仕事をする」という繰り返しの中でしか築くことはできません。
いくら口頭でうまく説明しても、実際に力を合わせて何かを作り出すことでしか得られない関係性というものは必ずあります。
そしてそのためには、ある程度の時間をかける必要があります。
しかし、フリーランスの時間的・人的リソースには限りがあるのもまた事実。
だからこそ、言い方は悪いかもしれませんが、自分が好きになれる相手と「より効率的に関係を深めていく」ために、それ以外の関係を手放す選択が必要になります。
戦略3:1と2を繰り返す
あとはこの、
- 気になる会社に鬼メール営業
- いい関係を築けそうな相手に集中する
というのを繰り返すだけです。
とてもシンプルな方法ですが、これだけで極力ストレスの少ない状態で仕事ができる人間関係を築き、さらに広げていくことができます。
はじめの方にも書きましたが、大事なのは自分をアピールするセールススキルではなく、気になる相手に臆せずコンタクトをとる行動力です。
相手にとってメリットがあるか否かは、相手が判断することです。
ですので、自分がメリットを提供できると思えば、とりあえず連絡してみるくらいのフットワークを意識してみるといいでしょう。
人とのつながりを大事に、でも執着しないことが大切
フリーランスを辞めたくなるほど疲弊する、その原因のほとんどは人間関係です。
そしてその人間関係の問題を解消するには、ストレスの元となる関係を手放すこと。
そのためには、自分を取り巻く人間関係の新陳代謝を高めていくことが重要になります。
お互いに気持ちよくコミュニケーションができるとか、人間性を尊敬できるというような人とのつながりを一人でも多く築いていきましょう。
それが仕事だけでなく、人生全体の価値を高めてくれるように思います。
しかしそれと同時に、どれだけ大切な人間関係だったとしても、それに執着しないことも大切です。
良くも悪くも、人間は変わっていくものです。
一時期は心の奥深くから分かり合えたと感じた相手でも、あるときから進む道が別れることはあります。
そういうときに相手を非難したり、または相手に遠慮して自分が本来進みたい道をあきらめたりというのは、お互いにプラスになりません。
離れていく人もいれば、また新しく出会う人もいます。
変わり続ける人間関係の中で、そのとき自分の傍にいる人を大切にする。
そういう感じでいいのではないかと思います。